Q1.復帰50年イベントに参加しての感想は？
50年という節目のイベントで、こうした形でご縁をいただき、沖縄について語るチャンスをいただけて光栄です。それは何より平一紘監督の映画『ミラクルシティコザ』が素晴らしかったと言うこともありますが、僕自身、学生の頃から沖縄のことは大きなテーマであり、関心事でした。沖縄の問題だけではないですが、日本人として考えなければいけないことが沖縄にはあると思っています。
Q2.沖縄との縁は？
何年も組んでいるスタッフが宮古島出身で、彼女のお兄さんが釣り船やスキューバダイビングのお店を営んでいるので、行くたびに船を出してもらっています。
何より沖縄には“ロック協会”と言うのがあって、地元のミュージシャンたちが夜な夜な集まっているのですが、その渦中に放り込まれたことで沖縄の面白さに目覚めてしまいました。
その縁もあって『さよならニッポン GOODBYE JAPAN』（1995）という映画を宮古島で2ヶ月にわたって撮影しました。それは同じ沖縄とはいえ一枚岩ではないことなど、さらに深く沖縄を知るきっかけになりました。
Q3.最も惹かれた沖縄の魅力は？
自然や音楽はもちろん、何より“日本人として生きるということは何だろう？”ということを、鏡のように問いかけてくるのが沖縄だと思っています。城（グスク）とか歴史的な遺産のような自然など本土とは異なる文化があって、それを“県”として言い切って良いのか？ それはアイヌ民族も同じかもしれません。そういうことを立ち止まって考えさせられるんです。なので単純に観光で沖縄に行くことはないですね。
Q4.今後さらに伝えたい沖縄の魅力は？
焼失した首里城は、観光のシンボルであり、沖縄の精神文化の象徴です。僕は幕末の琉球王国を描いた舞台「テンペスト」を仲間由紀恵さんと上演し、のちに彼女主演でドラマにもなりました。首里城には様々な出来事があって、日本人として生きることに対してのアンチテーゼだと思っています。結論から言えば、（日本からの独立を目指す離島をテーマにした）映画『さよならニッポン』にも繋がるのですが、沖縄を日本とは違うものとして認めると、より沖縄の方と向き合えるのではないかと思っています。もちろん戦争や米軍の問題など基本の問題ですが、まずは“琉球の人々”として認めることが正しいことではないかと思います。
50年後の沖縄に期待することは？
これだけデジタル化のスピードが加速化している中で、デジタル立国とし舵を切っていけるのではと思います。今や仕事は日本全国どこででもできます。住みやすさは間違いないので、仕事をするために沖縄に住んでいるんだよというような、経済や創作活動の拠点になればいいですね。
PROFILE
演出家・映画監督
1955年11月3日生まれ。 愛知県出身。88年、森田芳光総監督のオムニバス映画『バカヤロー！ 私、怒ってます』の「英語がなんだ」で映画監督デビュー。
テレビドラマ「金田一少年の事件簿」、「TRICK」シリーズ、「SPEC」シリーズは映画化もされ、ドラマと映画それぞれでヒットさせた。2015年には『イニシエーション・ラブ』『天空の蜂』で第40回記念報知映画賞・監督賞を受賞。その他の作品に『明日の記憶』（06）、『20世紀少年 三部作』（08〜09）、『人魚の眠る家』（18）、『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』(21)など。コロナウィルスの蔓延で表現活動が制限されるなか、仲間とインディーズ映画「truth」(22)を制作し、数々の国際映画賞を獲得。
